■STR-DH530(SONYのAVアンプ)の忠実度を求める
図にSTR-DH530の周波数応答特性と位相特性(<180Hz、高域側は未解析)を示します。
-40dB以下の差信号を得られる周波数範囲は、図より
振幅の場合40-13000Hz、
位相の場合>200Hz(高域側は未解析)程度と予想されます。
10-45000Hzの正弦波を使い、差信号を実際に測定した結果を図に示します。
低周波側が予想特性より良い理由は、解析ソフトで時間のずれを少し補正しているからです。
(既述ですが、音楽信号のように同時に複数の周波数成分を持っている場合、この補正は使えません)
上図から差信号が-40dB以下となる周波数範囲は100-900Hzです。
音楽信号を使った場合、その周波数成分は可聴域の20-20000Hzなので、確実に差信号は-40dB以下を得られません。
では、この周波数特性の違いが個々のアンプの音の違いなのでしょうか?
STR-DH530の周波数特性を見ると、-0.2dB(20Hz)、-0.13dB(20000Hz)と極めて小さく
周波数特性の違いによる音の違いを聴き分けできるとは到底思えません。
そこで、外部に補正回路として、LPF、HPFを追加し、利得、位相の周波数特性を平坦になるようにしました。
●周波数特性の補正
▲低域側の補正
補正回路と結果を示します。
まず位相が解析周波数範囲で±0.9度以内になるように、LPFの各定数を決定します。
図の定数で20Hz以上で±0.2度以内の結果が得られました。
いっぽう、振幅特性は若干うねりますが、これはデジタルフィルタで補正します。
▲高域側の補正
補正回路を示します。詳細は省略します。なおLを使った理由は解析が簡単になるからです。
▲補正の結果
差信号と周波数の関係の結果を示します。
20-20000Hzの周波数範囲で差信号は-40dB以下なので補正がうまくいっていると確認できます。
したがって、STR-DH530用の解析条件が決定しましたので、次に実際に音楽信号を使い
このアンプの忠実度を求めます。
●音楽信号を使いSTR-DH530の忠実度を求める
音源はサリナジョーンズの明日に架ける橋を使いました。低音から高音までバランスがよく
DRは15と大きく、所謂海苔マスタリングではないので、気持ちよく聴け愛聴曲の一つです。
▲負荷が8Ω純抵抗の場合
入力信号に対し差信号は-40dBを大きく下回り、忠実度は99%以上と明らかです。
▲負荷がスピーカ(タンノイ、スターリングの場合)
アンプの出力にはスピーカを繋ぐので、純抵抗ではなくスピーカを負荷にすべきというご指摘にしたがい
スピーカ負荷の場合の忠実度を求めてみました。
入力信号に対し差信号は-40dBを下回り、忠実度は99%以上と明らかです。
アンプの出力インピーダンスは実測0.09Ωと小さいのですが、スピーカのように大きく
インピーダンスが変動する場合、アンプの周波数特性にうねりを生じ、差信号は大きく
なります。この周波数特性のうねりを補正するとさらに差信号は小さくなりますが
忠実度が99%以上と求まりましたのでこのケースでは補正を加えませんでした。