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■差動アンプでオーディオアンプの忠実度の測定解析方法



■差動アンプでオーディオアンプの忠実度の測定解析方法
■差動アンプでオーディオアンプの忠実度を求める方法
■差動アンプでデノンPMA-390の忠実度を求める
■差動アンプでLM3886アンプの忠実度を求める

 ソフト解析によるアンプの忠実度の求め方はここで説明しました。
そしてSONY STR-DH530をはじめとして多くのアンプの忠実度は99%以上であり、 各アンプ間での音の違いが無いことを立証しました
しかし、未だに各メーカ間で固有の音が存在すると信じて疑わない人が多くいます。
そこで、ソフト解析はソフト開発の知識も必要でハードルが高いので、
ここでは簡単な差動アンプを使ったアンプの忠実度の測定解析方法を紹介します。

 図1に示す評価システムは廉価な装置で構成しました。



 この評価システムで忠実度が99%程度と分かれば、入力と出力の音の違いは人間の聴力では分かりません。 (詳細はこちら)

 そこで、99%の忠実度=-40dBの差成分を簡単に得るために、差動アンプを設計製作しました。
オーディオアンプの場合、入力信号はG倍増幅され大きくなるので、差動アンプの入力A-入力B間で信号の大きさに差ができ、大きな差動出力信号が出ます。
そこで、下の回路のように差動アンプの入力側にVR1、VR2を追加し、差動出力がゼロに調整できるようにしました。



この差動出力が入力信号より40dB小さければ、オーディオアンプの忠実度は99%と求まり、音を変えない理想アンプと立証できます。

なお、AD8307(対数アンプ)は差動出力をメータで確認できるように追加した回路で、直感的に差動出力が-40dBより小さいか大きいかをリアルタイムで確認できます。 差動出力をADCしてそのスペクトラムを見れば同様な確認ができるので、特に必要ありません。

次に問題になるのは、オーディオアンプの特性です。一般的に安定性、安全性を考慮してオーディオアンプの周波数特性は0.数Hzから100kHz程度です。したがって、差動アンプの入力間で周波数特性の異なる信号が生じ、ここで説明したように、利得偏差、位相差などにより次図で示すように大きな差信号が生じ、オーディオアンプの正しい評価はできません。


そこで、オーディオアンプの周波数特性と一致させるために、入力A側に同じ周波数特性に調整できる下の回路を追加します。


低域側の周波数特性はVR4で、高域側の周波数特性はVR5で合わせます。もし調整範囲内でオーディオアンプの周波数特性に合わせられない場合は、C12とC13の値を変えます。 このようにして周波数特性を合わせた時の結果を下図に示します。


20-15000Hzで差成分は-40dBより小さく、ほぼ可聴域で忠実度99%以上が得られています。

今まではオーディオアンプの負荷は8Ωの純抵抗でした。
しかし、スピーカはインピーダンスの周波数特性が非常に複雑で、スピーカを負荷にするとアンプの特性が激変し、これが各アンプ固有の音になると主張する人がいます。
経験を積めば、スピーカは単に周波数でインピーダンスが変化する負荷に過ぎないので、そのインピーダンスの影響以上にアンプの特性が変化することはありません。
そこで、スピーカセレッションDL4を負荷にした場合の差信号の特性を下図に示します。0dB入力時のアンプ出力は20Wで、ボリューム位置は普段聴いている時の音量に相当します。
ただし、20Wという定常正弦波を高域側に印加するとやかましいだけでなく、最悪ツィータを飛ばしてしまうことがあります。
したがって、正弦波のような定常信号を印加する場合、その出力はかなり小さくすべきです。今回は-20dBとしたので、電力換算で0.2Wです。


広範囲で差信号は-40dB以下なので忠実度はスピーカ負荷でも99%程度です。ネットブラインドなどの結果から実際有意に差が分かるのは、差信号が-30dBより大きい場合なので、図の結果より人間の聴力では入力信号は忠実に出力できていると言って良く、理想アンプと言えます。

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